小説の実写化作品はあまり大きな期待をせずに見るのがおすすめ

昔から映画やテレビドラマを制作する際に、有名な作品やその当時に人気がある作品など、小説を原作にすることが非常に盛んに行われて来ました。
最近では映画やドラマの業界全体の元気がなくなって来ており、オリジナルの企画がなかなか通りにくいことやネタが不足していることなどの理由から、そのような傾向がさらに大きくなってきたように思われます。
しかし、そういった実写化作品は残念ながら、原作の愛読者からの評判があまり良くない場合が珍しくありません。

その理由として重要だと考えられるのは、原作では登場人物や舞台となる場所が文字による文章だけで表現されているため、それぞれの読者の中で自分なりのイメージが出来上がっていることです。
そういった登場人物を特定の役者が演じたり、スタッフが作ったセットや既に存在するロケ地で撮影したりすると、多くの読者のイメージにピッタリと合致することはかなり難しいと思われます。
もちろん作者の表現力が重要ではあるものの、文字だけで描かれる文章であれば、例えば多くの男性の心をとりこにするような絶世の美女や、この世のものとは思えないような奇怪な世界を表現することは比較的容易です。
しかし、絶世の美女と誰もが納得するような女優を出演させたり、多くの人の度肝を抜くような奇怪なセットを作り上げたりするのは、現実問題としてかなりの困難を伴うものとなるでしょう。
近年ではCGの技術が発達して、昔よりも表現の幅が大きくなってきていることは確かなのですが、それでも小説の世界の実写化に特有の問題を解消することは簡単ではありません。
個々の読者が頭の中で作り上げている多種多様なイメージを、映像により一つだけに固定した形で提供すると、例え出演している役者や製作サイドのスタッフがどれほど原作のイメージに近づけるための努力を講じたとしても、少なくない読者に違和感を持たれてしまうことになるのです。

また、映画やドラマの時間の長さが、原作の文章の量に合っていないことが多いという点も、読者が不満を持ってしまう原因になります。
例えば単行本一冊分の原作を映像化しようとすると、二時間くらいの映画では尺が足りなくて、原作で描かれている部分を色々と端折ることになります。
そうすると、原作のあのシーンやセリフが好きだったのに、映画ではそこがカットされていると不満に感じる人が出て来ることになるのです。
それとは反対に、一クールのテレビドラマにすると逆に時間が余ることになって、オリジナルのキャラクターを登場させたり、エピソードを増やしたりなど、新しい要素をいくつも盛り込むことで対応する場合がよく見られます。その場合には、オリジナルのキャラクターが原作の雰囲気に合わなかったり、増やしたエピソードが原作の内容と矛盾が生じたりして、読者を怒らせる原因になってしまうことは珍しくありません。

このように、小説の実写化作品にはオリジナルの企画にはない難しさがあり、低い評価を受けてしまう場合がよく見られます。
とは言え、そういった作品の中には、純粋に映画やドラマとして見た場合に、意外と面白いと感じられるものが少なくないと思われます。
特に、あまり良く知られていない原作を元にして作られた作品の中には、原作を大幅に改変しているにもかかわらず、とても高い評価を得ているものもあります。
そもそも元の小説を読んでいない人にとっては、それとのイメージの違いは別に大きな問題にはならないので、素直に映画やドラマを楽しむことが出来るものと思われます。
逆に映画やドラマを見ることで、原作に関心が湧いて読んで見た人の中には、それが映画やドラマと違う部分があることに、不満を抱くことさえあるかも知れません。
つまり、小説とそれを実写化した作品とを厳密に比べることは、どちらを先に見た場合であっても、楽しみを削いでしまうという残念な結果をもたらすことがあり得るのです。

そう考えると、実写化作品に対してはあまり大きな期待をせず、軽い気持ちで見てみるのがおすすめだと言えます。
自分が好きな原作と比べるから、その映画やドラマが面白くないと感じてしまうことが多いのですから、そもそも比べずに別の作品を見るような感覚で見てみるのが望ましいのです。
ただ、原作とここが違うと不満を感じるのは、その作品の愛着を持っている読者である場合がほとんどなので、比べない方が良いと言われてもそう簡単には行かないかも知れません。
そのような場合には、最初から映画やドラマを見ないという選択肢がありますが、それもまた原作の愛読者にとっては寂しいことだと言えるでしょう。
その作品が純粋によくできていた場合には、食わず嫌いで見ないことによって損をしてしまう可能性すらあります。そこで、比べるなと言うのは難しいでしょうから、むしろ違いがどこにあるのかを確認しながら見て、その違いを楽しんでみようとしてみるという方法がおすすめです。

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